玉木正之編 「彼らの奇蹟−傑作スポーツアンソロジー」

彼らの奇蹟: 傑作スポーツアンソロジー (新潮文庫)

  • 一発目が吉田兼好(賀茂のくらべ馬)、二発目が澁澤龍彦(蹴鞠)というのは衒いすぎ。
  • 三島由紀夫「芸術の制作に必須な不健全な精神を強く深く保持するために、健全な肉体がいるのではないだろうか?人間性の見るも忌まわしい深部へ、深く、より深く井戸を掘り下げるために、鞏固な大理石の井戸側がいるのではなかろうか?」というのはまさに村上春樹イズムの先取り。意外。
  • 「格闘技はそれだけで別のアンソロジーを企画しているので除外(増田俊也氏の編纂で格闘技作品のアンソロジーがし、7月に新潮文庫から出版される予定)」、「さらに野球も、いずれそれだけで企画を進めたいので除外」、「すべて日本人の作品で」という編纂上の縛りがあったようで、セレクションが今ひとつパッとしないのもむべなるかなという感じ。
  • 中村計「普通の天才」が読み応えあり(中村計は雑誌「選択」の新連載「誤審のスポーツ史」も面白い)。山際淳司も機会があれば今一度読み返してみたいなというところ。