2016-05-08 司馬遼太郎 「世に棲む日日(1)〜(4)」 本 「燃えよ剣」でグッと盛り上がり、「新撰組血風録」でやや退潮しつつある司馬遼太郎気分。下がりきらないうちに本作に着手。 考えてみれば、山口県萩市に在住経験があり、土地勘があるのは大きなプラス(そういえば京都市に住んでいたこともありました)。 「野はつねに外交について現実的ではない。現実的であることを蔑視し、きわめて抽象的な思念で危機世界をつくりあげ、狂気の運動をくりひろげる」という指摘の腹落ち感。「現実的であることを蔑視し」というのがいかにも。 「どうも私は頭の足りぬ、文字すら読めぬ阿呆が好きで」という高杉晋作に、「あなたのように癇が走りすぎているお人には、そのようなお女はやすらぎになりましょう」と返す野村望東尼。リアリティーあり。 吉田松陰が徒然草を「生前、ずいぶん手に入れたくてついに入手できず世を去った」というのも印象に残るディテイル。 「おもしろきこともなき世をおもしろく」という辞世の歌を詠んだ人物の「動けば雷電の如く発すれば風雨の如」き人生はこういうものだったかと納得しつつ楽しく読了。伊藤博文や山県有朋の若き日の活躍も印象的でした。 幕末歴史小説が意外に楽しいですが、みなもと太郎「風雲児たち−幕末編」の楽しみを先食いしてしまっている気がしないでもない。