片岡 義男/小西康陽 「僕らのヒットパレード」

僕らのヒットパレード

  • 久々に書店をウロウロした機会に見かけて購入。
  • 片岡義男という人は音楽的にも文学的にも今までの興味・対象のレンジ外の人だった分、新鮮さはあり、小西康陽の企図はよく分かります(「片岡さんのレコードに対する好奇心、あるいはレコードを通して過去の事象を見たり感じたりする作法は、自分の知っている他のレコード・コレクターには見られない、独特のものだ」「片岡さんのレコードの愛し方を、ぼくは自分の友人であるレコード・コレクターの連中に知ってもらいたい、と思った。そそいて自分も片岡さんのようにレコードを楽しむ方法を学びたい、盗みたい、と考えた。この本のあとがきを自分が書いているのは、つまりそういうわけだ」)。
  • 他方で、「LPの音溝のなかの過去を現在へと僕が引き出すと、作用点であるその僕は、おなじ強さで過去のなかへと連れ戻される。1958年の3人のアメリカ女性たちの美しい歌声は、現在の僕を1958年、つまり高校生だった頃の僕へと、連れ戻す」(片岡義男)と、「レコードを愛することと、音楽を愛することは似ているようだがまったく違う(中略)言葉も、歌も、音楽も、ひとたび発音された後は時間の彼方に消えてなくなっている。そんなに新しい音楽も、録音されたときには過去のものとなっている。レコード・コレクターとは、つまり古いものを、過去を、もう取り戻すことの出来ないものを愛おしく思う人々のことだ」(小西康陽)という懐古的でセンチメンタルな感覚は通底。
  • エッセイが悪いという訳ではないですが、全部対談だったら完璧でした。立川直樹/森永博志「シャングリラの予言」や淀川長治蓮實重彦山田宏一「映画千夜一夜」のような、マニアックで趣味的な対談・鼎談が読みたい。