角幡唯介「雪男は向こうからやって来た」

雪男は向こうからやって来た (集英社文庫)

  • 「空白の五マイル-チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む」の角幡唯介。新著「極夜行」が好調のようですが、既文庫化の旧作をチョイス。
  • 朝日新聞を退社してからツアンポー探検に行くまでの間に参画していた雪男プロジェクトの顛末その他。「空白の5マイル」で開高健ノンフィクション賞を受賞する前年に本作で同賞に応募、最終選考で落選していたとのこと。
  • アプローチはかなり異なりますが、存在には半信半疑のまま、現象としての雪男に魅了されるという点で佐藤健寿「ヒマラヤに雪男を探す」に類似。
  • 「経験豊富で勇猛果敢な猿、雉、犬に『鬼ヶ島には鬼がいるんだってさ。見に行こうぜ!』と誘われ、『え、まじで?』とたじろぐうちに、いつのまにか旅の仲間に加えられて困惑する桃太郎」(三浦しをん)とは言い得て妙。
  • 芳野満彦、田部井淳子といった著名な登山家に雪男目撃体験があるのも驚きでしたが、フィリピンから小野田少尉を帰還させた鈴木紀夫が6回の雪男捜索の上雪崩で死亡していたという事実の業の深さに感じ入ります。
  • その鈴木紀夫の著書「大放浪-小野田少尉発見の旅」も読んでみたいですが、今年3月にNHKで放映されていたらしいドキュメンタリー「小野田さんと、雪男を探した男~鈴木紀夫の冒険と死~」が観てみたい。再放送待ち。