土田世紀「雲出づるところ<愛蔵版>」

愛蔵版 雲出づるところ

  • 物哀しいけどありきたりなエピソードの積み重ねと「私何のために生まれてきたの?」という陳腐な問いで食傷気味になるものの、「虫も魚も鳥も樹もバラバラじゃない、きっとひとつのものからできてるんだよ。大きな大きなひとつの命をわけあっていきてるんだよ。仲よしでいようね、また逢おうね」という10年後のプロローグは悪くない。
  • 内縁の妻・羽倉佳代は「大学でも宮沢賢治の研究に没頭して」おり、「『雲出づるところ』のテーマも、宮沢賢治の思想が色濃く反映」、「たぶんツッチーが宮沢賢治を100パーセント理解していたとは思わないけど、すくなくとも羽倉さんを通して知った賢治の死生観みたいなものを、自分なりに吸収して、咀嚼して、マンガのなかで表現していた気がする」という説明で妙に腑に落ちる。
  • 画力に圧倒される。特にラストのコマの素晴らしさ。
  • 松本大洋のバイブル「未成年」も買おう。