- 昔、雑誌の付録CDでこの人の「グッドモーニング・リトル・スクールガール」を聴いて、あまりの格好良さにブっ飛びました。
- その後、アルバム「ユー・ガッタ・ムーヴ」でやや肩透かしを食ったんですが。
- 久々に聴きたくなって本作を買ってみたら、これがドンピシャでツボです。
- 低音弦でドロンドロンしながら、高音弦でビュンビュンスライドする、ブッカ・ホワイト・スタイル。
- 演奏中でもゴホゴホ咳しちゃうし、乗ってくればリズム走るし、カントリー・ブルースのローダウンな美味が満載。ブルージーな咳が逸品。
- ガガガガガッとスライドバーが豪快にフレットを擦る音もワイルドで格好良いです。
- 何か「イェー」とか合の手が聴こえたりするんですが(犬が吠えたりもしてます)、どこで録音したんでしょうか。
- マクダウェルの自宅だそうです。なるほど。
- 「You Gotta Move」も聴き直してみたのですが、本作のギターの音の生々しさを聴いてしまうとどうしても見劣りがしてしまいます。
- 演奏自体もやや軽めというか。「Shake'Em On Down」でも、「You Gotta Move」収録版がダンス・チューン風なのに比べて、本作収録版は殆どヘビメタ。
- 以下ちょっと詳しくメモ。
- キャリア。
- 1926年(21歳)、農作業以外の仕事を求めてメンフィスに移住。様々な肉体労働に従事しつつ演奏も継続。ただし、「音楽で金は稼げなかったね。金が貰える時もあったけど、貰えない時もあった」とのこと。
- 1940〜41年(36〜37歳)、メンフィスから40マイル南方のミシシッピ州コモに移住。農作業の傍ら演奏を継続。1929年に移住したとの説もある。
- 因みに、この頃まで自分のギターは持っていなかった。初めての自分のギターはコモに移る直前にテキサスから来た白人に貰った。
- スライドに使用したのは、最初はナイフ、次に牛の肋骨、最終的にはガラス。嵌めるのは薬指。チューニングは主にオープンD。
- フォーク・ブルース・リバイバルの流れで1959年(55歳)、アラン・ロマックスにより「発見」され、国会図書館の記録音源として初録音。アトランティックやプレスティッジのフィールド・レコーディング集に収録され、発売。
- これが端緒となって徐々に有名に。1964年1月にはニューポート・フォーク・フェスティバルに出演、1965年10月にはアメリカン・フォーク・フェスティバルの一員として渡欧。
- 1971年、ローリング・ストーンズがアルバム「スティッキー・フィンガーズ」において「You Gotta Move」をカバー(「You Gotta Move」のスリーブに嬉しそうに「スティッキー・フィンガーズ」のジャケットのジッパーを弄るマクダウェルが写っている)。
- 1972年、癌により死去。
- 「You Gotta Move」。
- 「Mississippi Fred McDowell」。
- 同様にアラン・ロマックスの録音に感銘を受けたのが当時大学院生だったディック・スポッツウッド。
- その際、友人でありレコーディング・プロデューサーであるピート・カイケンダールから録音機材を借りることが出来る。
- これが59年の「発見」後初めての録音。スポッツウッドにはレコード製作の意図は全くなかった。
- 実際に、80年代初頭に英国でレコード化されるまで約20年間お蔵入りしていた。
- 62年録音というタイミング、幸運にも借りられた録音機材、レコード化を前提としない録音、諸々の条件が奇跡的に重なった快心の一撃と言って良いと思います(小出斉氏によれば「スポッツウッドが録音技術に無知だったことが幸いし、ギターの音が非常にダイレクトに録られ」たということらしい)。
- 忘れられた頃にとんでもなくエグい録音が世に出たという意味ではサム・クックの「ハーレム・スクエア・ライブ」に似ていると言えなくも無い。
- 感動的なライナーノートを書いたトム・ポンポセロも1999年死去。書いたのが95年というのも実に印象的。
- あと、1969年以降エレキ化するらしいのですが、どんな感じなんでしょうか。ハウンドドッグ・テイラーみたいだったらのけぞるんですが。そんな訳ないか。
- 当分本作でお腹一杯でしょうけど、次買うなら「First Recordings: The Alan Lomax Portait Series」が先だろうな。