Marvin Gaye 「Midnight Love (Legacy Edition)」

ミッドナイト・ラヴ(レガシー・エディション)

  • 「ホワッツ・ゴーイン・オン」や「レッツ・ゲット・イット・オン」のデラックス・エディションのようには巷間話題にならなかったのでスルーしていた「ミッドナイト・ラヴ」のレガシー・エディション。「サタデーナイト・フィーヴァー」がきっかけで知ったハーヴィー・フークワのエピソードに猛感動した勢いで購入。音源よりはライナーが目当てです。
  • 「このアルバムは1998年に発表した『ミッドナイト・ラヴ+セクシャル・ヒーリング』(SRCS8817〜18)の新装再発売です。収録音源と内容はすべて同じものです」とのこと。
  • 会社によってデラックス・エディションとレガシー・エディションが違うことに初めて気がつきました。ざっと見たところ、ユニバーサル系統(ポリドール、モータウン)がデラックス・エディションで、ソニー系統(エピック、CBS)がレガシー・エディション。
  • デヴィッド・リッツのライナーが期待を上回る充実振り。「内省的になりすぎてるんじゃないかって、心配になってしまうんだ。誰も興味を持ってくれなかったらどうしようってね。このチャンスを台無しにするわけにはいかないし、僕にはヒットが必要なんだ」と心配していたかと思えば、打合せに12時間も遅刻した挙げ句「コロンビアのために唄うより、鳥たちと一緒に唄っていた方がマシだ、契約を破棄するぞ」とラーキン・アーノルドを罵ったりと、例によって極端に振り幅の大きいマーヴィン・ゲイの心中を察するに涙腺緩みます。
  • 「セクシャル・ヒーリング」の冒頭(「Oh baby, now let's get down tonight」の後)で「ダダダダダン」と低音ヴォイスでベースラインとユニゾンしているのがハーヴィー・フークワでしょうか。「ヒール・ミー、マイ・ダーリン」のコーラスの一番下のパートもそれっぽいです。泣けてしょうがない。
  • これまで「セクシャル・ヒーリング」以外の曲は数回聴き流しただけだったので全然気付いていませんでしたが、最後の曲「マイ・ラヴ・イズ・ウェイティング」の冒頭でしっかりとハーヴィー・フークワ等への謝意を表明していました(「Thank you ladies and gentlemen, I sure hope you've enjoyed our new album here on CBS records. We'd like to thank Mr. Harvey Fuqua, Mr. Gordon Banks, Mr. Mike Butcher, Mr. Larkin Arnold, most of all we want to thank our heavenly Father, Jesus!」)。復活に向けた期待や周囲への感謝がストレートに述べられていてこれまた泣けます。
  • 何にせよこれが80年代のブラコンをドミネイトした音像であり、所謂ソウル・ミュージックとブラコンを繋げるリンク。数少ないピースの精緻な組合せと繊細なコーラスに乗せて、「僕にはセクシャル・ヒーリングが必要だ」とカルマを全開にしつつあくまでエレガンスは失わないという、まごうことなき天才の所業。
  • ということが、オルタネット・12インチ・インストゥメンタル(インスト)、オリジナル・ヴォーカル・ヴァージョン(ヴォーカルのみ)、オルタネット・ヴォーカル/ミックスと続く3連発を聴くとヒシヒシと感じられます。
  • 「キレてる(freaky)音楽を、キレてるファンに提供し続けて、それが爆発的に売れてしまうんだ。最高じゃないか、僕もそんな素晴らしいことが出来たら、他には何もいらないよ」とリック・ジェームスへの羨望を露わにしていますが、「ミッドナイト・レディ」オリジナル・ヴァージョンの「クリック・ゲームス/リック・ジェームス」で「スーパー・フリーク!」と連呼していて面白いです。
  • 「アイ・ベット・ユー・ワンダー(「ロッキン・アフター・ミッドナイト」オリジナル・ヴァージョン)」の歌い出しの違和感は凄かった。
  • 「ライヴ・アット・ザ・ロンドン・パレイディアム」が録音されたパレイディアム・シアターを眺めてきましたが、「サウンド・オブ・ミュージック」を上演しているギリシャ神殿風の劇場でした。因みにボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ「ライヴ!」で有名なライシアム・シアターも眺めてきましたが、コヴェント・ガーデンにある上品なミュージカル劇場で、「ライオン・キング」を上演していました。