- 「粗忽長屋」が聴きたかったので、京須偕充の「"ここはどこ、わたしはだれ?”風の意識のゆらぎは誰にでもあるが、それを徹底したかたちで二人の人物に託した噺だろうか。そう思えば、本人が本人と認めてその本人を引き取るのは正常なのかも知れない−と思わせるほど自然に演じて、不思議な世界へ誘ってくれた五代目柳家小さんが唯一最高の高座だった」という評に従って柳家小さんを購入。他の演目は「湯屋番」と「狸賽」。
- 保田武宏によるライナー「前座栗之助誕生」が中々良い感じです。「クリみたいな顔をしているから栗之助」には笑いました。
- 「抱かれてんのは確かに俺なんだが、抱いている俺はいったい誰だろう」は、望月峯太郎「バタ足金魚」でも似たような話がありました(明日のオレと今日のオレ対決)。
- ライナーによると「馬鹿馬鹿しい噺だからと、いかにも馬鹿馬鹿しそうにやったら必ず客にけられる。その点小さんの演出は、終わりに行くほど会話が真に迫っているうえ、テンポが速くなり、スキがない」んだそうです。
- 雀の缶詰のくだりが実に味があって(「お〜いご覧よ、手頃な枕が転がってきた〜」)是非映像で見たい。
- 「宇都宮釣天井飯 本多謀反の飯 将軍暗殺の飯」というフレーズも何とはなしに好もしい。「一膳飯は食べるもんじゃァないてェから御膳を願います」というのは、盛り切り一杯の飯は葬儀の時死者に供えるため、不吉だからということのよう。
- 魚の骨が咽喉に刺さったら象牙で撫でるとか、盗人の昼寝(むすび十の昼寝)というのも馴染みのないフレーズで新鮮でした。「雌鶏勧めて雄鶏刻を作る」=主人が妻の意見に動かされる例え。
- 「煙突小僧煤之助」、「音羽屋のやらねェ役だ」など、歌舞伎の関連が多く出てくるのですが、「『さてその次は』ときたら『江ノ島の』」などをはじめ、全体的に「白浪五人男・稲瀬川の勢揃い」が引用されているそうです。
- 「ばんだ〜いの〜おんな〜ゆは〜」というアホな鼻歌が短いながらも癖になる味で真似をしてしまいます。
- 木村重成は「大坂落城のみぎり、兜に名香を焚いて立派に討ち死にをした」という故事も初耳。講談「難波戦記」にも出てくる史実のようです。
- 「狸賽」も、特に子狸が夜半に訪れてきて「た〜◎△#*です」や「腹ァ叩いて感心してました」と言う辺り映像が見てみたい。
- 「加賀様の印、梅鉢だよ。天神様」というサゲに繋がる部分が今日では通じにくいかもしれません。
- 飄々、淡々という風情があって、全体として映像で見てみたい感じ。人間国宝の至芸とあらば10枚組DVDボックス買っちゃおうかと思ったり。
- 関係ないですが、枝雀一門が選び抜いた十八席を収録した桂枝雀のDVDボックス「十八番」が4月1日発売予定。これも欲しい。