柳家小さん 「五代目柳家小さん落語傑作選 其の五」

五代目柳家小さん 落語傑作選 其の五 [DVD]  五代目 柳家小さん 落語傑作選 全集 [DVD]

  • 「五代目柳家小さん落語傑作選」全集DVDボックス。其の五は「唐茄子屋」と「笠碁」。例によって引用は京須偕充
  • 「唐茄子屋」(1980年)は、「唐茄子屋政談」との混同を避けるため「かぼちゃ屋」と呼ばれ、「唐茄子屋」とはほとんど呼ばれないそうですが、ここでは「唐茄子屋」。「四代目柳家小さん(1888〜1947)が上方噺の『蜜柑屋』を東京に移したものだが、与太郎表現の見識も柳家本流に伝わる一種の美学」で、「自然薯のように素朴に演じて深い笑いを湧かせる柳家小さんの口演に接すると、救われた思いで屈託なく笑える」とのこと。三遊亭金馬の「孝行糖」と比べるとその「美学」が実感されます。
  • 「南瓜喰う奴が居るから拵えんのか、拵える奴があるから喰うのか知らねえが、間の悪い奴が間に入って売るようなことになる」はクスクスッと笑うところだと思ったのですが、客席は意外にドッと受けています。
  • 「唐茄子屋でござい」、「その通りでござい」のところがしみじみ可笑しくて癖になります。
  • 「ガチャガチャに似てる」となぜ「南瓜が好きそうな顔」なのか全然分かりませんでしたが、ガチャガチャ=クツワムシの俗称とのこと。
  • 「笠碁」(1979年)は「五代目柳家小さんが絶品だった。第三者から見れば他愛ないことだが、当人同士は真剣。そんな心理の推移がじんわりとにじみ出てくる。首を左右に振って落ち着かない目つきで歩くあたりは、頭の上の笠が見えるようだった。なかなか握手ができず、互いに悪口を言い合いながらキッカケをつかもうとするところでは、聴いているこちらが仲介に飛び込みたくなるくらい」であり、かつ「碁が題材だから、老練であってこそこなせる噺で、若手向きではないが、小さんに限っては、四十代初めから先輩の『笠碁』を凌いでいたのを思い出す」とのこと。
  • 「凝っては思案に能わず」=物事に熱中しすぎると冷静な判断ができなくなる。凝っては思案に余る。
  • 「見物の下知に従うヘボ将棋」=下手な素人将棋は、見物している人が差し出がましくいちいち指図するのに影響されて、余計勝負を危うくする。無責任な第三者の意見に左右されるような自信のない態度では、所詮勝ちはおぼつかない、ということ。
  • 「碁会所なんか行って打てる碁じゃないよあいつは、アタシとしか打てない碁だ」というところも可笑しいですが、老境に差し掛かった二人の幼馴染みの微笑ましい関係に意外にジワッと来ます。