三遊亭圓生 「昭和の名人による男と女のお色気噺選集(4)」

昭和の名人による男と女のお色気噺選集 4

  • 「紺屋高尾」が聴きたかったのですが、「幾代餅」ならそれなりにCDも出ているものの、「紺屋高尾」となると三遊亭圓生立川談志ぐらいしか主要なオプションがありません。
  • 三遊亭圓生となると「圓生百席(14)」か「三遊亭圓生名演集(15)」があるのですが、スタジオ録音の「圓生百席」には抵抗を感じる一方で、「三遊亭圓生名演集」だと並録の「子は鎹」が「NHK落語名人選(87)」と被ってしまいます(「四宿の屁」は魅力的ではあるのですが)。
  • 得心がいかず更に調べていたところ、「昭和の名人による男と女のお色気噺選集」というやや恥ずかしいタイトルの選集の第4集が「汲みたて」と「紺屋高尾」を収録していることを発見。アマゾンでは入手できませんが、楽天で購入できました。
  • 「汲みたて」(1963年、東宝名人会)は、比較的メジャーな噺だと思っていたものの、京須偕充の諸作で一切紹介されていないのは際どいところがあるからか、全体的に下めいているからか分かりませんが、昔、麻生芳伸「落語特選(下)」で読んでギョッとした「お開帳をただ拝もうと思ったから罰(バチ)のあたるのも当たり前」が聴けて大満足。
  • ライナーによると「元来は音曲噺」で「師匠が『なんかお歌いなね』と言うと、半公が常磐津『戻橋』の一節『たどる大路』を歌い、その後で都々逸も歌ったのだが、この録音では省略されている」とのこと。
  • お目当ての「紺屋高尾」(1976年、東宝名人会)は、「講釈ダネ」で、「ほどよく笑いを添えた人情噺の体裁だが、美談型の基本トーン、また、あまり登場人物に深く思いを語らせず、地噺風に説明ですますところ『源平藤橘四姓の人』のような言い回しなどに、講談の匂いがあるようだ」とのこと。
  • 清玄桜姫の件で「こっちが坊主で向こうが桜、合うわけがない」という意味が分からなかったのですが、恐らく花札の役のことだと思われます。
  • 「六代目三遊亭圓生(1900〜1979)の得意ネタで、そうした噺の性格をわきまえてか、高尾と久蔵のやりとりなどを、いくらでも芝居に出来る人なのに、サラリとおだやかな仕上げにしてきかせてくれた」とのことですが、「背任横領罪で小菅監獄」や「開けてみると三菱銀行の預金が」といったクスグリが「サラリとおだやかな仕上げ」とマッチしているのかどうかは良く分かりません。
  • 他方で、「時代に合わない恋愛美談のようでいて、決してそうはなら」ず、「かなり若いお客をひきつけて」いるが、「共通の泣かせどころは高尾(幾代)に真実を打ち明けるところで、みんなここに一途な男の心を描き出す。圓生流のサラッとした表現とは逆」とのこと。
  • 今日流のジワッと泣ける噺を期待していたのですが、淡々としつつも飽きのこない口演が聴けて逆に良かった、ということにしておきます。