- 前々から気にはなっていたトロージャンのボックス。店頭で見かけて他に買うものが見つからなかったので初めて購入。
- ライナーは独立した冊子ではなく内ジャケに直接印刷されており、大した内容ではないだろうと高を括って読んでみるとこれが思いの外興味深い。
- 「グッドネス・グレイシャス・ミー」というBBCの番組の存在は知りませんでしたが、ウィリアム・シェイクスピアもクリフ・リチャードもインドが生んだと主張する「ミスター・エヴリシング・カムズ・フロム・インディア」というのはなかなか面白そうなキャラクターです。
- ディスク1「ドリームランド」はインストゥルメンタル。冒頭1曲目トミー・マクック&ザ・スーパーソニックス「ネヴァー・トゥ・ビー・マイン」に聴き覚えがあると思ったら「オー・ソレ・ミーオ」のカヴァーでした。
- 「テイク・ファイヴ」を4拍子(2拍子と4拍子の区別がよく分かりませんが)でカヴァーしてしまうところがいかにもな感じで和みますが、イントロだけはしっかり5拍子で演奏しているところは器用なんだか不器用なんだか。(ヴァル・ベネット「ザ・ロシアンズ・アー・カミング」)。
- ウィンストン・ライリーがプロデュースした、アンセル・コリンズ「スタラグ17」はスタラグ・リディムのオリジナルだけあってえらく格好良い。
- 2曲フィーチャーされているヒッピー・ボーイズは、バレット兄弟がメンバーで、リー・ペリーと仕事をするときは第2期アップセッターズ名義になったようです。山口‘Gucci’佳宏 「スカ・ディスク・ガイド−400 Fabulous Discs From Jamaican Oldies Music」によると、ハリー・J・オールスターズの母体でもあるようです。
- ビヴァリーズ・オール・スターズ「ウォーク・ウィズ・ラヴ・ヴァージョン」は、ザ・メイタルズ「ウォーク・ウィズ・ラヴ」のダブでヴォーカル・トラックを抜いているのですが、他のトラックに回り込んだヴォーカル(トゥーツ・ヒバートなんでしょうか)がハミングのように遠くから微かに聞こえるのが切ない感じで、妙に泣ける(ザ・ヒッピー・ボーイズ「ヴードゥー」でも微かに聞こえます)。オリジナルも聴きたい。
- こういうインストのセットなのかなと思いきや、ディスク2「テイク・イット・イージー」はうって変わってヴォーカル・チューン。ザ・メイタルズ「ラヴ・イズ・ゴナ・レット・ミー・ダウン」のメロウネスは腰が砕けそうな破壊力。
- ジュニア・バイルズ「カーリー・ロックス」やホープトン・ルイス「テイク・イット・イージー」等のクラシックがさほどピンとこなかったのは良いとしても、ノーマン・ブラウンやフランキー・ポール等の比較的新しい時代の音源はトロージャンのコンピレーションには似つかわしくなく、やや興醒め。
- 「gwaan」は「go on」から派生したパトワ表記らしい(用例「Wa gwaan?(=What's going on?)」)。
- ディスク3「ドリフト・アウェイ」はラヴァーズのカヴァー。オリジナルの記憶がない曲も多いのですが、チョーズン・ヒュー「ドリフト・アウェイ」(ドビー・グレイ)やジョン・ホルト「フォー・ザ・ラヴ・オブ・ユー」(アイズレー・ブラザーズ)、スリム・スミス「クローサー・トゥギャザー」(インプレッションズ)は中々良い塩梅。
- 他方で、ドミノ・ジョンソン「サマータイム」はもうカヴァーとは言えないのではないかと、オードリー・ホール「ラヴァーズ・コンチェルト」にはエイヴェックス系のコンピレーションかと、それぞれ違和感を覚えました。
- 全体にややスウィートな曲が多く、ジャマイカ以外には求め得ない、カラカラにドライでありながら切ないという枯れたメロウネスを求めるとやや肩透かしをくうディスクかもしれません。
- 50曲で約3,000円、1曲100円以下なので文句は全くありませんが、ガンガン買い進めたいシリーズでもなさそうです。ソウルフル・レゲエ編とロック・ステディ編ぐらいは欲しいかも。