魚住昭 「特捜検察の闇」

特捜検察の闇 (文春文庫)

  • 多大な期待を抱いて読みましたが、「渡邉恒雄−メディアと権力」や「野中広務−差別と権力」に比べると踏み込みが甘く、やや肩透かしを食った感じは否定できません。
  • 月刊「文藝春秋」の98年4月特別号「許永中失踪・カギを握る男」と月刊「現代」2000年2月号の「麻原彰晃主任弁護人逮捕は『冤罪』である」という、独立した2つの雑誌記事を基に加筆してまとめたものなので、焦点が拡散しているのも致し方ないのかもしれません。
  • 巨額の経済事案に現実感が沸かないという要因もあるかもしれない。
  • 失われた10年と呼ばれる時期において、中坊公平ソニー、ホンダ等が神格化されていましたが、今や遠い昔という感じ(ホンダは常に独立独歩で、同業他社が勝手にはしゃいだり落ち込んだりしている印象ですが)。
  • そういう意味では、今「カンブリア宮殿」等でスポット・ライトを浴びている人たちも数年後には何がどうなっているか分からず、まさに「盛者必衰の理」に身が引き締まる思いです。
  • 住専処理のための6850億円で日本中が大騒ぎだったことを考えれば、70兆円のベイルアウトなど狂気の沙汰というほかなく、公的資金の投入に免疫が出来過ぎなのではないかという気がします。当時、モラル・ハザードの大合唱だった記憶がありますが、やはり食い逃げハンターのような枠組は人心の安寧、ガバナンスの確保のためにも必要なのではないでしょうか。
  • 日本のノン・フィクションは取り敢えず打ち止め。次はジョン・クラカワー「荒野へ」に行きたい(映画「イントゥ・ザ・ワイルド」も観たい)。