- とっくの昔に文庫化されているようですが、とにかく読みます。村上春樹訳。龍口直太郎の旧訳も読んでいないので全くの初読。
- なんとなく敬遠してきましたが、もっと早く読めば良かったというか、逆に、今まで読まずにいて良かったというか、さすが「ちょっとした古典」、実に面白かった。
- 村上春樹が「ティファニーで朝食を」に触れていたという記憶がないのですが、「ダンス・ダンス・ダンス」の登場人物「ユミヨシさん」はやはり本作に登場する日系人「ユニオシさん」からの連想なのでしょうか。
- あとがき「『ティファニーで朝食を』時代のトルーマン・カポーティ」が相変わらず面白いです。「型破りの奔放さや、性的開放性、潔いいかがわしさ」という形容の的確さに唸りました。
- 村上春樹がしばしば引用する「夜の樹」や、山田詠美が激賞する「遠い声、遠い部屋」など、初期作品は読んだものの今ひとつピンきていなかったのですが、「僕の第二のキャリアが始まったのは、『ティファニーで朝食を』からだ。僕はそのときから違うものの見方をし、違う文体を用いるようになった。もちろんある程度まで、ということだが。文体はたしかにその時点で変化を遂げた。文体は刈り込まれ、簡素になり、より統御されたものになった。よりクリアなものになった。その文体は以前のものほど、多くの部分において、刺激的ではなくなったと思う」と本人が語るところの、感覚に頼らないオーソドックスなスタイルへの変更が好みにあっているのかもしれません。
- そういう意味では、テクニックの上り坂とセンスの下り坂のクロッシング・ポイントで奇跡的にバランスがとれた作品なのでしょうか。
- 積んである「カメレオンのための音楽」について、「無理にひねり出されたような不自然さを感じさせる作品だった」と言われると読書意欲が殺がれます。
- 同じく敬遠していた「冷血」にもチャレンジしてみたい気がしましたが、その前に、村上春樹訳のレイモンド・チャンドラー「さよなら、愛しい人」。