Duke Ellington 「Duke Ellington at Newport 1956 (Complete)」

Ellington At Newport 1956

  • ビル・クロウ「さようらバードランド−あるジャズ・ミュージシャンの回想」の巻末に付された「私的レコード・ガイド」において、村上春樹も「(8)のA面と(7)はジャズ史に残る有名なデューク・エリントン楽団のライヴ。ニューポート・ジャズ祭の長い歴史の中でもこれくらい盛り上がったステージはちょっとない。とくに(7)の『ディミヌエンド・アンド・クレッセンド・イン・ブルー』におけるポール・ゴンザルヴェスの伝説的二十七コーラス連続ソロはまさに観客の度肝を抜いた。レコードで聴いてもたしかに鬼気迫るものがある。観客の興奮がひしひしと伝わってくる。舞台の袖から大声で叫び続けるジョージョーンズの声も聞こえる」と紹介していました。
  • 1999年に発売されたコンプリート盤。コロンビア録音(右チャンネル)と発掘されたVOA録音(左チャンネル)の2種類のモノラル音源を合成したステレオ・ヴァージョン。コロンビアの録音はソロがオフ気味だった等の問題があったので、追加的なスタジオ録音で修正したのがオリジナルLP(60%がスタジオ録音で40%がライヴ録音)だったとのこと。
  • 20時30分頃にステージに上がったものの、ジミー・ハミルトン、レイ・ナンス、クラーク・テリー、ジミー・ウッドが行方不明だったため、「ブラック・アンド・タン・ファンタジー」と「ティー・フォー・トゥー」の2曲を演奏したのみでステージから下り、ステージに戻るまで3時間も待つ必要があったという波乱含みのスタート。
  • 名刺代わりの「A列車で行こう」で再開した後、ニューポート組曲を披露、「ソフィスティケイテッド・レディ」と「デイ・イン、デイ・アウト」を挟んだ後、いよいよ「ディミヌエンド・イン・ブルー・アンド・クレッシェンド・イン・ブルー」。
  • 通常、インターヴァルのソロはデューク・エリントンが演奏していたとのこと。また、ステージ裏から臨場感溢れる相の手を入れたジョージョーンズはオリジナルLPの裏ジャケットに写真が掲載されましたが、名前すら記載されなかったメンバー達は立腹したとのこと。
  • 熱狂する観客を落ち着かせるために、ジョニー・ホッジスをフィーチャーしたスロー・ナンバー「アイ・ガット・イット・バッド(アンド・ザット・エイント・グッド)」、「ジープス・ブルース」を演奏。レイ・ナンスが歌う「チューリップ・オア・ターニップ」で終了する予定が、聴衆が収まらず(凄まじいブーイングと怒号が聴き取れます)、更に「スキン・ディープ」を演奏、「ムード・インディゴ」によるエンディングで終了(「We do love you madly!」)という流れ。
  • ディスク2に収録されているスタジオ音源なのかライヴ音源なのかハッキリしないトラックで若干混乱しましたが、以下分かった範囲でメモ。
    • 17曲目「アイ・ガット・イット・バッド(アンド・ザット・エイント・グッド)」は2曲目「アイ・ガット・イット・バッド(アンド・ザット・エイント・グッド)」と同じ音源(ただしモノラル)で、ジョニー・ホッジスのミスが差し替えられているもの(確かに吹き始めのところでミストーンが聴かれます)。差し替え済みの後者が既発表音源、生音源の前者が未発表音源。
    • 「ニューポート・フェスティヴァル組曲」は、ノーマン・オコナー神父のコメントと、「フェスティヴァル・ジャンクション」におけるエリントンによるソロイストの紹介はライヴ音源で、その他のエリントンのアナウンスはスタジオ録音。演奏自体もスタジオ録音で拍手等を加えた疑似ライヴ。
    • そもそもは、評判となったポール・ゴンザルベスの27コーラス連続ソロの録音がオフマイクだった(間違えてコロンビアではなくVOAのマイクに向かってソロを吹いてしまった)ため、スタジオ再録音となったとのことですが、スタジオ録音は上手くいかなかったため、結局、ライブ録音に拍手をオーヴァーダブしたものがオリジナルLPに収録されたヴァージョン(本CDには未収録)。
  • 聴衆を落ち着かせようとするデューク・エリントンとレイ・ナンスや、頭を傾けてソロを吹くポール・ゴンザルベスの姿など、ライナーに掲載された写真も豊富で楽しい。
  • ディミヌエンド・イン・ブルー・アンド・クレッシェンド・イン・ブルー」はもちろん腰が抜けるほど格好良くて痺れますが、軽い感じの「ティー・フォー・トゥー」が妙にスウィンギーで堪えられません。
  • ビッグ・バンドが時代遅れになり、低迷期にあったエリントン・オーケストラが、ジョニー・ホッジスの復帰やサム・ウッドヤードの加入で体制を整え、野外フェスティヴァルという新たな場で特大ホームランをぶっ飛ばしたという経緯も格好良いです。