「魅惑のオペラ(02);椿姫」

魅惑のオペラ 2 ヴェルディ 椿姫

  • 「当面後回し」と言いつつ、NHKで放送されたミラノ・スカラ座の「アイーダ」日本公演等を見ていて刺激されたため、シリーズ第2弾「椿姫」。 カルロ・リッツィ指揮、フェニーチェ歌劇場管弦楽団・合唱団。1992年。
  • 「オペラが最も盛んだった19世紀の半ば、世界にはたった二人の音楽家しかいなかった。二人は同じ年、1813年に生まれ、アルプスをはさんで対峙した。北にいたのはリヒャルト・ワーグナー(1813〜83)で、南にいたのがジュゼッペ・ベルディ(1813〜1901)だった」という図式は格好良い。
  • 「本巻DVDの映像は、薄暗い運河から始まる。ゴンドラは曲がりくねった運河の細い路地から歌劇場に入っていく。その昔、ヴェネツィアのフェニーチェ歌劇場の正面玄関は運河に面しており、着飾った貴族たちはゴンドラで歌劇場に乗りつけたという。映像が収録されたのは1992年の12月。また古い歌劇場が焼け落ちる前のことで、今となっては当時の歌劇場の雰囲気を伝える貴重な記録となった」とのこと。そういわれるてみればヴェネツィア情緒溢れる映像。
  • 「『椿姫』のモデル、マリー・デュプレシは、椿の花を好み、普段は白い椿を、月のうち5日は赤い椿を身につけたという。椿が赤い期間、彼女に思いを寄せる男たちは嫉妬をまぬかれたのだった」という囲みで紹介されているエピソードにはドキッとします。
  • 超有名曲「乾杯の歌」がこの超有名曲だと分かったのも収穫。どこで使われていたのかが思い出せないのですが。
  • 手持ちの吉松隆「究極のCD200・クラシックの自由時間」からメモ。
    • 「小デュマの小説『椿を持った女』という二流の文学は、ヴァルディと脚本家ピアーヴェによって『ラ・トラヴィアータ』と改題されたこの作品は、真の人間の愛と苦悩を描き出す力を持つに至った。この苦悩の真実に対して、ヴェルディは、美しくも厳しい音楽を与えた。美しさだけに目を向けるのであれば、ヴェルディの真実は逃げて行く。音楽というものが、いかに深い人間の心の真実を描き出せるのか。この命題を、輝かしい歌の旋律美の中に盛り込むことに成功したのが、ベルディの中期の作品群−<リゴレット><トロヴァトーレ>そして<ラ・トラヴィアータ>−であった」(國土潤一)。
  • ヴィオレッタ・ヴァレリー役のエディタ・グルベローヴァは年齢的、容姿的に若干厳しい感もありましたが、かなり高名な方のようで、「さようなら、過ぎ去った日の美しく楽しい夢よ」などはさすがに素人耳にもグッとくるものあり(弱音のコントロールにハッとしました)。
  • 逆にアルフレード・ジェルモン役のニール・シコフはそこまで著名な歌手でもないようですが、小柄な体型と眼鏡が世間知らずのお坊ちゃんのイメージにピッタリ(汗まみれでの熱唱)。
  • 華やかな第1幕、第2幕第2場と、シリアスな第2幕第1場と第3幕が交互しつつクライマックスに至るバランスの取れた構成(第2幕第1場は観ていてややダレましたが)や、約130分というコンパクトさも初心者向きではないでしょうか。
  • 初見なのでどうしてもストーリーを追ってしまうのですが、今後観直す時には、より音楽に集中して聴けるのではないかと思います。