桂米朝 「桂米朝上方落語大全集第四期(35)」

桂米朝 上方落語大全集 第四期

  • 「天狗さばき」は、京須偕充の解説によると、「古い噺を三代目桂米朝が整えたもので、以後東西で演者が増えた」とのことですが、他方で桂米朝の解説によると「この落語は東京の金原亭馬生師の放送で、私ははじめて耳にしたものです」とのこと。
  • 非常に良くできた噺でとても楽しいのですが、「はてなの茶碗」同様、こういうテキストで読んでも面白いキッチリと構成された噺は、意外と繰り返しは聴かない傾向があるような気がします(これを楽しみに第四期を選択した程なのですが)。
  • 近江八景」は、本人の解説によりますと「結末はまことにお古いことばゲームの様相を呈するが、中盤までの主人公と友人、易者とのやりとりはなかなかおもしろい」とのことですが、どうしても古さが耳に残ります。
  • 他方で、京須偕充の解説によりますと、「圓生の証言によれば、一晩に必ず一席は『近江八景』が寄席の高座にかかるほどはやったことがあるという」、「地名や人名などの固有名詞を織り込んだ言い立てが喜ばれる時代でもあったのだろう」、「今でも、こういうところを軽快かつ流麗にこなせば、お客は半わかりながらもついていくのではないだろうか」とのこと。
  • 以下分かった範囲でメモ。
    • 天眼鏡=人相見・手相見などの使う柄のついた大形の凸レンズ
    • ポッペン=ビードロ
    • 近江八景=三井の晩鐘、石山の秋月、堅田落雁(浮見堂)、粟津の晴嵐、矢橋の帰帆、比良の暮雪、唐崎の夜雨、瀬田の夕照。
    • 沢火革=改めるべき日に改めれば信頼が得られる。大いに通じる。貞正であればよい。悔いはなくなる。
    • 四爻=乾、夬、大有、大壮。
    • 変爻=老陽、もしくは老陰と出た爻のことを指し、 その爻の陽陰を入れ替えたもが之卦となる。
    • 水火既済=小事は通じる。貞正であれば良い。最初は吉でも終わりは乱れる。
    • 膳所大津市内の地名。
  • 「牛の丸薬」は、「作者は誰か判りませんが、実に巧妙にできてまして、ほんにこれならかかるわいと思いますな」との解説のとおり、よくできた手口で、春先の季節感も漂う情緒ある噺ですが、惜しむらくは発端からサゲまでを繋ぐ生命線「大和炬燵」がイメージし難いこと。
  • 以下分かった範囲でメモ。
    • 大和炬燵=土でできた置きごたつ。奈良地方から産出したところからいう。
    • 丸子(がんじ)=丸薬
    • 眼かど=眼力
    • 中手=三人兄弟の真ん中の子ども。末の子は乙子、おとんぼ。
    • お見忘れ(おみそれ)=会っても気づかなかったり、だれであるか思い出せなかったりした時に言う語。相手の能力・技量などをみそこなっていたことをわびる気持ちを表していう語。
    • 靫=大阪市中央部、西区の一地区。京町堀、阿波座堀、東西横堀川に挟まれた地域。江戸時代に塩干魚、鰹節、于鰯などの問屋が集まっていた。
    • 干鰯=生鰯を天日で乾し固めた肥料。
    • 倉敷料=倉庫に物品を預けた場合に支払う保管料。敷料。
  • 次集、第三十六集は「しまつの極意」、「坊主茶屋」、「桃太郎」。