- 昔から落語を題材とした名作喜劇として存在は認識していたのですが、小林信彦「おかしな男 渥美清」を読むといかにこの時代の喜劇人がこの作品(「川島雄三監督のドライな名喜劇」)及びフランキー堺を高く評価していたかヒシヒシと伝わってきたので、観る機会を探していたところ、2月18日、NHK−BSで放送。
- 「居残り佐平次」、「品川心中」、「三枚起請」、「お見立て」という古典落語を、高杉晋作の英国公使館焼き討ち事件(相模屋で密議)と絡ませるという、有り物の枠組を借りているが故の構造主義的なクールさはあるかもしれません。
- 小林信彦も繰り返し述べていたフランキー堺の早熟な天才性(「今でも上映される名作『幕末太陽伝』の主役を演じた時は二十八歳。モダニズム喜劇の天才として、これ以上期待された人はいなかった」)はよく分かりましたが、それ故に、「川島雄三が『幕末太陽伝』の姉妹編として企画した『寛政太陽伝』−それは幻の絵師・写楽を描くものだったはずだが、その企画(といってもメモがあっただけ)に固執したフランキーは、小説『写楽道行』を書き、その映画化に苦労した。私財一億五千万(キネマ旬報社・日本映画人名辞典)を投じて、篠田正浩監督で大作『写楽』を作ろうとした時、主役の写楽はあなたでは無理だ、と監督にいわれたという」というフランキー堺の後半生は非常に切ない。
- フランキー堺の快演と並んで素晴らしいのが相模屋(土蔵相模)のセット。郭の習俗や海辺の情景がとても鮮やかで印象的でした。
- 川島雄三の監督作品をつらつらと調べてみたところ、「喜劇とんかつ一代記」が面白そう。NHKに期待して待ちたいと思います。