桂米朝 「桂米朝上方落語大全集第四期(40)」

桂米朝 上方落語大全集 第四期

  • 「こぶ弁慶」は「東の旅」の一部。大津を舞台にいかにも古風な展開が大らかに続く中、突然壁土を食べるのが大好きというガブリエル・ガルシア=マルケス的な捻りが入り、壁土を食べたせいで肩にできたこぶが弁慶の形に成長してしゃべり出すという、更なるレアリズモ・マヒコ的加速を見せる、まさしく「実に奇想天外なけったいな話」。「どうですこの色、うまそうな色してまっしゃろ」「分からん、わたいはこれは」、「どなたはんもお先ぃ」「誰も食べへん」というやりとりが可笑しい。
  • 弁慶が名乗りを上げる場面で古今亭志ん生の出囃子「一丁入り」が流れていましたが、妙に落ち着きません。
  • 「こぶ弁慶」のあとは(先日三遊亭圓生で聞いた)「三十石」で東の旅は終わりになるようです。
  • 以下、分かった範囲でメモ。
    • 四方出の縮みの髪≒四王天但馬守。
    • 十能=小型のスコップあるいは柄杓のような形をした、炭や灰を運ぶための家庭道具あるいは農具。
    • 手回し=早手回し。先を予測して、事前に準備をしておくこと。また、そのさま。
    • 仕舞物=店仕舞いなどで処分する商品。また、売れ残りの品。
    • 「あれは伊勢、これは伊勢」=伊勢音頭の歌詞。
    • 「旅人は雪呉竹に群雀、泊まりては立ち泊まりては立ち」=次々に宿にやってきて、宿泊しては出発していく旅人の様子を雀に例えた歌。
    • 浮世又平=歌舞伎「傾城反魂香」に出て来る絵描き。通称吃又。大津絵の始祖。実在の人物ではない。
    • むさんこに=めちゃくちゃに。
    • 蛸薬師京都市中京区の妙心寺や東京都目黒区の成就院などの薬師如来の俗称。イボ等に霊験があるとされ、タコの絵馬を掲げて祈願する風がある。多く、薬師が海上をタコに乗って渡来したという口碑をもつ。
    • 入相の鐘=夕暮の鐘。
    • 陣鐘=昔、軍勢の進退や、陣中の種々の合図のために鳴らした鐘や銅鑼。
    • 王城=王の住む城。都。特に京都。
    • 金紋先箱=金紋をつけた挟み箱。大名行列の先頭に担がせたもの。
    • 大鳥毛=鷹などの羽で、栗のいが状に大きく作り、槍の鞘や馬印としたもの。
    • 天児屋命=日本神話に登場する神。春日権現とも呼ぶ。岩戸隠れの際、岩戸の前で祝詞を唱え、天照大神が岩戸を少し開いたときに太玉命とともに鏡を差し出した。天孫降臨の際ニニギに随伴し、中臣連などの祖となったとされる。中臣連の祖神であることから、中臣鎌足を祖とする藤原氏氏神として信仰された。
    • 中の関白道隆公=藤原道隆
    • 弁正=平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活躍した熊野三山の社僧で、21代熊野別当湛増(1130〜1198)がモデルか。武蔵坊弁慶の父とされるが、文学的伝承のみで確証はない。
    • 書写山=「西の比叡山」とも呼ばれ平安中期に建立された天台宗三大道場の一つ円教寺の本山。標高371m。西国33霊場の第27番札所。
    • 観慶=高松市鷲ノ山の天台宗の寺・鷲峰寺中興1世。鷲峰寺は戦国時代、長曽我部元親の兵火により伽藍が焼失。江戸時代初期、初代高松藩主・松平頼重がその名刹を惜しみ、園城寺三井寺)から観慶を招いて住持とし諸堂を再建。
    • 阿闍梨密教で修行が一定の段階に達し灌頂を受けた僧。
    • 古蹟=名所旧跡。
    • 五条の天神=五条天神宮。建立当時は広大だった五条天神宮の境内で源義経武蔵坊弁慶が最初に出会ったとされる。
    • 丑の刻参り=丑の刻(午前1時から午前3時ごろ)に神社の御神木に憎い相手に見立てた藁人形を毎夜五寸釘で打ち込むという、日本に古来から伝わる呪術の一種。
    • 奥秀衡=藤原秀衡平安時代末期の武将。奥州藤原氏第3代当主。源義経を匿った。
    • 下向=高い所から低い所へおりていくこと。都から地方へ行くこと。
    • 衣川=衣川館。現在の岩手県西磐井郡平泉町高館にあった奥州藤原氏の居館。源義経主従の最期の場所として知られる。
    • 「夜の昆布が見逃せん」=夜間、昆布を見たらちょっとつまんで食べる習慣、その際に発する言葉。喜ぶという言葉の洒落。花柳界や水商売では今日でもある風習。
  • 「子ほめ」は、「サンプルと失敗の二部構成という『鸚鵡返し』噺の典型で、(中略)落語のエッセンスのような噺」で、「米団治の型に従って、あちこち少しづつ手を入れてみたのですが、土台がよくできたはなしですので、結構、今のお客様にもよく受けるズレのない話」。
  • サゲは江戸版とは異なる米朝一門式(「今朝とはお若う見える、どうみてもあさってくらいや」)で、満年齢の時代にも対応。
  • 以下、分かった範囲でメモ。
    • かったい=ハンセン病に感染し、明らかにそれとわかる「らい腫」(らい結節)が現れ、あるいは末梢神経の知覚異常によって外傷を避けられず繰り返し受け、その瘢痕によって健康な頃に比べて風貌が著しく変わってしまった人を呼んだ、古典的呼称。
    • つけ落ち=数え忘れ。記入漏れ。
    • 血が若い=産後間もない。
  • 落語熱が再燃すれば第1期〜第3期についても購入する日がくるかもしれませんが、当面、落語は「日本の話芸」と「TBS落語研究会」をチェックするぐらいになりそう。「考える人」に掲載された村上春樹のロング・インタヴューを読んで「真景累ヶ淵」が聞きたくなったりもしていますが青空文庫で読むことにします。