Chris Ware 「Jimmy Corrigan: The Smartest Kid on Earth」

Jimmy Corrigan: The Smartest Kid on Earth

  • 久々に海外コミック。購入時点では1巻が出たっきり放置状態だった邦訳も、今となっては3巻まできっちり完結しているようですが、翻訳はどうしてもレタリングの雰囲気が損なわれるので気合いを入れ直して原書で。
  • 英語力の問題としては、会話とナラティヴがそれぞれコマを超えて繋がっていく1892〜1893年のパートが、大意を見失うほどではないものの、ちょっとした難関。
  • 妄想・回想・歴史を交えて頻繁に切り替わる場面やライトモチーフの多用に最初はどうなることかと思いましたが、途中で挟まれる総括「Story So Far」以降は、勢いが出てきます。逆に言うと(書き下ろしではないので致し方ないのかもしれませんが)「Story So Far」以前はあそこまでガチャガチャさせる必要性はなかったという気もします。
  • 細馬宏通「ジミー・コリガンの余白に」は無料で読める上に非常に理解が深まりますが、おばあさんが死んだのは「ジェイムズが11才のとき」というのは果たして正しいのでしょうか。
  • 沈鬱、寂寞としたエピソードの積み重ねでやるせない思いにさせる独特の運び方には似たものすら思い当たりません。ナラティヴが一人称過去形になるイタリア系の友人宅を訪れるパートからシカゴ万博に至る展開の切なさたるや。
  • 登場人物各々の意識は分断されたまま、作者と読者が共有する歴史感覚。これが切なさの源泉でしょうか。
  • 原書コミックとしては、チャールズ・M・シュルツ「ザ・コンプリート・ピーナッツ」に着手する前に、ニール・ゲイマンサンドマン」を1巻だけ試し読みしておきたいという計画。と思いつつも、ダニエル・クロウズ「ゴースト・ワールド」が読みたくなっていたり。