日本書票協会 「書物愛−蔵書票の世界」

書物愛 蔵書票の世界 (平凡社新書)

  • 本/本棚関係書籍を読んだついでに、未読だった蔵書票本もやっつけることに。モメンタム重視。
  • かねてより、蔵書印あるいは蔵書票というものに関心があり、篆刻か蔵書票の本を探した結果、最も入手容易だったのが本書。
  • 書物に貼り付ける添え物として、本来的にはシンプルなものであるべきで、「Velle est posse」、「Timendi causa est nescire」といったラテン語格言などを入れるのは、野暮ったい行為のようです。
  • 他方で、「一流版画家の蔵書票ともなると、実際に書物に貼られるよりも、それ自体がひとつの作品として流通し、鑑賞されることのほうが多くなった。(中略)つまり蔵書票は書物を離れ、版画の一ジャンルとして独自の発展を遂げたのである」とのこと。本書もその方向に偏っており、「書物愛」という題名はややミスリーディングな感じがします(むしろ書票愛)。
  • 10万円ぐらいあれば版画家に発注できるようですが、モチーフを伝えたり、下絵を確認したり、票主と版画家とでやりとりしながら、ゆるりと良い作品を作り上げるという世界のようです。雅趣という言葉を想起せざるを得ません。
  • 蔵書票の本場たるヨーロッパの作品を紹介する「西洋蔵書票の世界」は、「特別付録」扱いではありますが、相応のヴォリューム。
  • 関係ありませんが、フランス文学者山田珠樹(森茉莉の最初の夫)の「スタンダール全集四十数巻を猫革で製本し、東都の愛猫家に恐れられた」というプロフィールは凄い。
  • もう少し実例がカラーでたくさん紹介されていればなお良かったですが、まずは満足。