- レコード・コレクターズ4月号の細野晴臣/岡田崇/松永良平の鼎談で興味を持って即購入したものの、転居やら何やらでタイミングを失してしまい、タイミングを失してしまうと充実したブックレットが逆に高いハードルと化して立ちはだかり、元々馴染みのあるジャンルでもないこともあってズルズルと着手が遅れていましたが、他にも聴きたいものも貯まってきたところ、意を決して、ブックレットを読みつつ数回聴き通しました。若干やっつけ感。
- ディスク1がアーカイヴから発掘されたレイモンド・スコットの超秘蔵音源、ディスク2がトリビュート・カヴァー。電子音楽作品の収録もありませんし、前印象と異なり、レイモンド・スコットについての決定版のパッケージといえるものではなさそうです。
- 「奇想のジャズ作曲家としてデビューした男が、なぜかカートゥーンのBGMとして親しまれ、テレビの人気バンド・リーダーとなり、やがて忽然と姿を消して、人知れず電子音楽の研究と製作にいそしんでいった」という経歴やエピソードは異常に興味深いのですが、音源はそこまでは楽しめませんでした。
- 珍奇な曲名からも容易に窺えますが、言葉の響きへの独特かつ強い拘りを示すエピソードが面白い。例えば、
- ジュリアードを卒業したのに作編曲に譜面は使わない主義(「You give a better performance if you skip the eyes」)というのも興味深い。
- 近年まで「モーグ・シンセサイザーの研究と製作において、スコットの教示と電子シーケンサーに関する技術提供が大きな意味を持つものだった」という事実をロバート・モーグが語らなかったのは、レイモンド・スコット本人が「ボブ・モーグに対し、私のシーケンサー研究の成果をコピーしてはならないし、誰かに明かすことも許さないと絶えず言い続けていた」と言って封印していたためだそうです。
- 晩年はベリー・ゴーディー・ジュニアに誘われて、モータウンのR&D部門の責任者を勤めたとのこと。マーヴィン・ゲイ「ガット・トゥ・ギヴ・イット・アップ」(1977年)のシンセベースにもレイモンド・スコットの影響が…と妄想が膨らみかけましたが、RMI社のシンセサイザーだという情報が山ほどヒットしました。いったい70年代のモータウンで何をしていたんでしょうか(ベリー・ゴーディー・ジュニアは数年で関心を失って一連のダイアナ・ロス映画の製作にのめり込んでいくことになるようです)。
- ジャン=ジャック・ペリーがいまだ存命だということに驚きました(84歳。ガーション・キングスレイも存命(91歳))。
- 端的にはノヴェルティー・ジャズ。ガチャガチャと楽しげな音楽ではありますが、グルーヴィーだとかリラクシンだとか、個人的に音楽に求める要素が希薄なので、どんどん聴き込んでいくということにはならなそう。