米原万里 「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」

嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)

  • 章三(貴族院議員)〜昶(左翼地下活動家)〜万里という米原家三代の系譜は圧巻。フィクションの設定としてもそうそう思いつかないし、思いついても展開できない無二の世界。
  • にも関わらず、長々と繰り広げられる会話形式が説明台詞っぽくなってしまっていて、会話自体が日本語訳であることも含め、何枚かフィルターを透過したようなような切実感のなさで、残念ながら涙腺は緩まず。
  • 旧友との再会がもたらす後味の悪さには普遍性あり。20世紀後半の中東欧史という歴史的背景と普遍的な個人体験のツインカム構造が自然に一体化しているところが成功のポイントでしょうか。