- 「目黒のさんま」は代表的演目。明朗な芸風に良くマッチしており、「特に落語のファンでなくても、目黒といえばサンマを連想させるくらいに地名を轟かせたのだから偉大なもの」(京須偕充)。
- 「三軒長屋」。「この噺の魅力は(中略)江戸職人図絵的な、いや市井図絵風の巷談性にあり、職人、商人、武士などの階層が個性的に活写されている点」(京須偕充)という解説からすると、「頓智風」のサゲの鮮やかさで回収する正攻法スタイル。志ん生で聞いてみたいところ。
- 主目的の「くしゃみ講釈」。そういえば三代目三遊亭金馬は講釈師修行中に「講釈を始めると客が笑ってしまう」という理由で落語家に転身した人でした。
- 犬糞の件がない代わりに、講釈中の鼾で追い出されたという因縁。八百屋ではなく乾物屋と言ってしまうと、「八百屋お七」~「小姓の吉三」の連想が効かないと思うのですが。
- からくり「八百屋お七」の謡(「お寺さんは駒込の吉祥寺/茶の湯座敷の次の間で/膝で瞼をつつらついて目で知らす」)が、歌詞も調子も上方(「小伝馬町より引き出され/先には制札紙のぼり/同心与力を供に連れ/裸馬にと乗せられて」)と全然違って驚き。
- その他、講釈師の名前は「後藤一山」ではなく「一龍斎貞能」。東京版での演目は「三方ヶ原軍記」という解説もありますが、三遊亭金馬は「難波戦記」で上方と同じ。
- さすが元講釈師見習い。良い調子です。