五代目古今亭志ん生「CD倶楽部名人会(29)」

https://auctions.c.yimg.jp/images.auctions.yahoo.co.jp/image/dr000/auc0503/users/9/2/5/7/nekotyan_2004-img600x540-1551870614eu9cmz26936.jpg

  • 図書館活用。志ん生はあるだけ借りたい。
  • 久々に志ん生を聴いたところ若々しい声の張りに驚き。「あくび指南」は1958年7月(ニッポン放送)、「天狗裁き」は1957年12月(NHK)、「安兵衛狐」は1956年9月(ニッポン放送)と、いずれも昭和30年代前半の録音。スピード感はラジオ放送という要因もあるのかもしれない。
  • 「あくび指南」は「五代目古今亭志ん生がこの噺を人気落語に押し上げた」もので、「飄然とした口調を聴いていると、こんな浮世離れの世界が実在するかのような錯覚に誘われる」、「五代目古今亭志ん生が傑出しておもしろかった」と京須偕充は評価していますが、少しドタバタした印象。
  • 天狗裁き」は、上方ネタの明治期の東京移植というよくあるパターンではなく、東京で生き残っていた十代目金原亭馬生の「天狗裁き」を聴いた桂米朝が、元々は上方ルーツの噺と知って復活させたという経緯のよう。「馬生は志ん生の長男だから、志ん生譲りでこの噺をやったのだろうが、志ん生は誰から教わったのか。今となっては分からない」(保田武宏)とのこと。
  • 東京版は、天狗から奪った羽団扇でトンズラ、降り立ったお屋敷の娘の病を羽団扇で治して結婚、いざ床入りというところで嫁に起こされるという終盤(長編落語「羽団扇」の前半部分を独立させたのが「天狗裁き」らしい)。寝起きからではなく「早く寝て夢を見ろ」から始まるところも含めて、桂米朝のすっきり整った「天狗裁き」よりもガチャガチャしていますが、その分フックがあって賑やか。
  • 「安兵衛狐」。「野ざらし/骨釣り」、「天神山」との関係が入り組んでいて複雑。「野ざらし/骨釣り」のオリジナルは明代中国の笑話本「笑府」。二代目林家正蔵が「笑府」ベースに仕立た怪異な噺を。明治初期の爆笑王・初代三遊亭圓遊がギャグたくさんのナンセンスな滑稽噺の形に改作したのが東京版「野ざらし」(サゲまで行かないことが多い)。桂米朝が桂右之助から聴き取り、東京版「野ざらし」も参考に復活させたのが上方版「骨釣り」。
  • 「骨釣り」の後半が葛の葉伝説のパロディーになるのが上方落語「天神山」(ただし、保田武宏のライナーによれば「成立過程から言ってまったく別の噺」らしい)。これを三代目柳家小さんが東京に移植したのが「墓見」で、五代目古今亭志ん生が「安兵衛狐」に改題。「天神山」が「ケレンをふくめて、芝居噺であることが最大の特徴」なのに対して「安兵衛狐」「ケレンも芝居もない」簡略版(京須偕充)。
  • 上方において「骨釣り」が忘れ去られていた間も「天神山」は生きていた、という理解で良いのか。
  • 「狐が痛がるでしょう?」が妙に可笑しい。