安田謙一「なんとかとなんとかがいたなんとかズ」

なんとかと なんとかがいた なんとかズ

  • 図書館活用。区内に安田謙一の蔵書がなかったため、「ピントがボケる音」を自腹で購入したところ、他区から本書を取り寄せてもらえたという経緯。
  • ヴァラエティブック的なものを期待していたのですが、2002~2012年に商業媒体に書かれたアルバム評等を時系列にドカッとまとめた形(「フリー時代の安田謙一、10年の記録」)。著者個人の色があまり出ない内容で、「私がアマリリスだったころ」のような私的な文章がもっと読みたかった。
  • 「PIZZICATO ONE『11のとても悲しい歌』」も思い入れが深くて良かった。DJ中の小西康陽に迷いつつ客のリクエストを伝えたところ、「ハッピー・バースデイ」のMCと共に、流れをぶった切るアーチー・ベル&ザ・ドレルズ「タイトゥン・アップ」を躊躇なくかけてフロア大盛り上がり、というエピソードも素敵。
  • ロック中心で、興味・関心のエリアがあまり重複せず。気になったのはダニエル・ジョンストンぐらい。キッチュ・ビザールな感覚も今ひとつ。全然興味のないエリアの話題でも惹きつけるだけの今日子な美意識・スタイルがないということかもしれない。磁場が弱い。
  • 緩さが魅力なのかもしれませんが、1冊読み通しても、あれも聴きたい、これも観たいとならないのは(第一に趣味嗜好の問題ではありますが)寂しい。
  • 表紙写真の元ネタはザ・シャッグス(世界最悪のロックンロール・バンド)。
  • 本書の収録原稿は著者の自選で、「『ピントがボケる音』に入っている原稿のチョイスは編集者の樽本周馬さん」とのことですが果たして。