「選択3月号」

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  • メモ
  • プーチン「密室会議」が生む恐怖-ウクライナ暴挙の「四悪人」
  • 日台関係を揺るがす「TPP問題」-岸田政権は蔡英文を見捨てるのか
  • 国家安全保障局の「機能不全」-発足8年で「無用の長物」に
  • 岸田「媚ロシア外交」の国恥-米欧の逆を行く「軟弱路線」
  • 宏池会恒例の醜い「内輪もめ」-岸田を悩ます自派閥の悪弊
  • 塩野義「コロナ治療薬」の危うさ-政治的「特例承認」は無理筋
  • 熊本「半導体誘致」に中国の影-狙われるTSMCの「人材と情報」
  • 石原慎太郎なる「幻影」-作家も政治家も「二流の人」

土田世紀「未成年<愛蔵版>」

愛蔵版 未成年 (小学館クリエイティブ単行本)

  • 松本大洋のバイブル。「ぼくはツッチーの『未成年』に影響を受けて、『青い春』を描いたりしました」とのことですが、「青い春」(1993年)だけではなく、古泉智浩ジンバルロック」(1998年~)も想起しました。田舎のヤンキーの無為な青春。空回りする青春というと望月峯太郎バタアシ金魚」(1985年~)がちょっと早いか。
  • 「ぼくが『未成年』をいいと思うのって、まだもがいてる感じがあるからなんです。2話、3話で描き込みをやめてたり、4話目で圧倒的に描き込んでたりする」とも語っていますが、試行錯誤しながらタッチがどんどん洗練されていくところも望月峯太郎バタアシ金魚」を思い出させる。
  • ちょっとゴチャゴチャしすぎている気もするものの、デビュー作独特の全てを投入した感覚は魅力。

土田世紀「雲出づるところ<愛蔵版>」

愛蔵版 雲出づるところ

  • 物哀しいけどありきたりなエピソードの積み重ねと「私何のために生まれてきたの?」という陳腐な問いで食傷気味になるものの、「虫も魚も鳥も樹もバラバラじゃない、きっとひとつのものからできてるんだよ。大きな大きなひとつの命をわけあっていきてるんだよ。仲よしでいようね、また逢おうね」という10年後のプロローグは悪くない。
  • 内縁の妻・羽倉佳代は「大学でも宮沢賢治の研究に没頭して」おり、「『雲出づるところ』のテーマも、宮沢賢治の思想が色濃く反映」、「たぶんツッチーが宮沢賢治を100パーセント理解していたとは思わないけど、すくなくとも羽倉さんを通して知った賢治の死生観みたいなものを、自分なりに吸収して、咀嚼して、マンガのなかで表現していた気がする」という説明で妙に腑に落ちる。
  • 画力に圧倒される。特にラストのコマの素晴らしさ。
  • 松本大洋のバイブル「未成年」も買おう。

「フィールド・オブ・ドリームス」

フィールド・オブ・ドリームス [Blu-ray]

  • NHK-BSプレミアムで8月30日放送。フィル・アルデン・ロビンソン監督。1989年。
  • ずっとスルーしてきましたが、オードリールートからの再発見。
  • お告げでドライヴしていくスピリチュアルな展開に面食らいますが、中年の危機、父と息子、破れた夢といったモチーフが詩的な映像でまとめられていてジワッとくるものがある。
  • テレンス・マンの設定に違和感がありましたが、原作ではJ・D・サリンジャーその人として登場するとのこと。
  • 原作はマジックリアリズム小説だと英語版ウィキに書いてありますが、ちょっと読んでみたい。
  • 追記。
  • W.P.キンセラシューレス・ジョー」。図書館で借りてみたものの序盤で放棄。マジックリアリズムではないような。ミドルエイジクライシスの要素も薄め。

miyearnzzlabo.com

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「アンダーグラウンド」

アンダーグラウンド通常版(スペシャル・プライス) [Blu-ray]

  • NHK-BSプレミアムで8月26日放送。エミール・クストリッツァ監督。1995年。
  • なにはともあれ劇中で演奏される狂騒的なブラスバンドインパクトが絶大。チョチェク/ジプシー・ブラスというバルカン半島で19世紀頃興った音楽のジャンルがあるようですが、どこまでがトラディショナルでどこからがゴラン・ブレゴヴィッチによるアレンジなのか見当がつかない。えらく現代的でパンキッシュで格好良い。
  • 才気はほとばしっているし、長さにも関わらず2回観てしまう魅力はあるものの、バルカンの歴史や風土へのエキゾチシズムとの区別がうまくつかない。
  • ミキ・マノイロヴィッチラザル・リストフスキー、ミリャナ・ヤコヴィッチの組合せも魅力があった。
  • 船上の結婚式(クロとナタリア)と地下の結婚式(ヨヴァンとエレナ)が音楽も相まって最高でしたが、2組とも式だけで結婚が事実上成立していないのか。噛み切る電線と電気ショック拷問、イヴァンの2回の首吊り、回りながら踊るマルコとナタリアと燃えながら回り続ける車椅子、と他にもいくつか前後半で対を構成。
  • リアリズムから徐々にファンタジーに移行していって最後はフェリーニ「8 1/2」。地割れして流れ行く小島の映像に驚きましたがどうやって撮影したんだろう。
  • セルビア的(英雄的なセルビア人対親ナチの裏切り者スロヴェニア人とクロアチア人)で大セルビア主義的(旧ユーゴスラビアユートピアとして美化)という政治的な批判については「そうなのかな」という程度ですが、スラヴォイ・ジジェクの批評が面白かった(「『アンダーグラウンド』の問題点とは、シニシズムの罠に陥ってしまい、この隠微な『地下世界(アンダーグラウンド)』を好意的距離の下に呈示しているところにある」「バタイユもどきの過剰な蕩尽によるトランス状態、飲んだり喰ったり、踊ったり姦淫したり、この狂騒的リズムの延々たる継続-民族浄化主義者の『夢』はこういったものから成っているのだし、ここにこそ、『彼らは一体どうしてあんなことができたのだろう』という問いに対する答えがあるのだ。もし、戦争の標準的な定義が『他の手段による政治の継続』であるとするなら、民族浄化とは、他の手段による(一種の)詩の継続とはいえないだろうか」)。
  • 追記。2月24日、ロシアがウクライナ侵攻開始。クストリッツァは熱烈なプーチン支持者。